第5試合:中邑真輔というレスラーがいた

中邑真輔vsイングナショフ戦のころ、中邑はどこか危ない雰囲気を漂わせていた。黒の革パンを履いた中邑は最高にカッコよかった。

暗黒時代の新日本の中でオレは中邑が一番好きだった。棚橋弘至が新しいファン層を開拓していく前の時代だったろうか?

中邑は若くしてIWGPチャンプとして選ばれた。アントニオ猪木の意向だと思う。足の長いスラリとしたソップ型の体形は猪木好みだし、強さと凶暴さを含ませた雰囲気も猪木好みといったトコロだろう。

ただし、この頃の新日本のことはほとんど知らない。棚橋がIWGPチャンプとして会社の顔になり(永田さん時代もあったっけ?)、中邑はいつのまにか変化していった。

クネクネしたり、滾ったり、コスチュームもスリラー時代のマイケルジャクソンみたいなえんじ色のコスチュームに変化していった。

2015年、オレが見た中邑真輔パフォーマーになっていた。いや、レスラーとしても一級品だった。ドームの飯伏戦やG1の棚橋戦、どれも名勝負だし、レスラー中邑の凄みがよくわかる試合だ。

でも、オレは一抹の寂しさを感じていた。総合格闘技時代のドスの効いた危険な凄みはなかった。入場から試合後のマイクまで完璧なパフォーマンスをこなす中邑は完成度としては満点だ。ただなんというか、レスラーを完璧にこなすパフォーマーみたいに見えてしまい、オレはそこに物足りなさを感じていた。

中邑とオカダは同じユニットに所属しオカダがIWGP戦線に参戦している以上、中邑はインターコンチで遊ぶこと位しかできなくなっていた。インターコンチでも試合は面白かったんだが、中邑への思い入れは少しずつだが減っていったのも事実だ。

2016年、中邑はWWEに移籍する。寂しさはあったが悲しくはなかった。中邑はWWE向きなのは確かだ。日本人でアソコまでのパフォーマーはいない。完璧なパフォーマーとしての中邑真輔もカッコいい。でも、オレはヤンチャ坊主みたいなプロレスラー中邑真輔の方が好きだった。洗練された中邑よりも荒く猛々しい中邑の方がオレには魅力的だった。